yoshiakist

痛み

freee 社をやめて半年が過ぎた。この間私は、休んだり、ゲームを作ったりして生きていた。
が、そろそろ経済的にまずいと思って就職活動をしたり、友人の仕事の手伝いをしようと思って面談を重ねていて、思う。これ自分にはもう無理だ、と。

リモートでカジュアル面談をすると、冷や汗が止まらない。身体が強張る。なんか熱っぽい。
「ぜひ佐藤さんには次の選好に進んでいただきたいのですが」 と言われ、思わず 「はい、ぜひ進みたいです」 と二つ返事。その後で猛烈に後悔してしまう。こんな失敗を何度繰り返すのだろうか。

その後、就活マッチングサイトでお断りを入れ、お仕事マッチング募集を停止した。
苦しさの余り酒を飲んで、この文章を書いている。

嫌われたくない

とにかく人に嫌われたくないのである。
よく、死ぬこと以外かすり傷といって周囲の人間から励ましの言葉をかけられる。でも自分の心はひたすらに嫌われるのを回避し続けている。

freee でマネージャーの話が出たときも、本心では向いてないと悟りつつも「喜んで!」と承諾した。3か月後、長期の療養期間をもらった。
期待に応えられそうにないという理由で、社員ランクを落として減給してもらうことを上長に相談したこともある。当然それで問題が解決するわけはないので却下された。
たまたま社内で表彰されたときは、周囲の手柄を自分一人が奪い去ったようでただひたすらに自己嫌悪した。

こういう、ADHD や双極症のケがある自分を隠し、健常者として振る舞うことをマスキングと呼ぶらしい。
また、会話の中で相手の意に沿わないことを飲み込んだり、相手が望むことにすぐ同意してしまうような発言・返答をする振る舞いについてはフォーニング(Fawning)と言うそうだ。
ぺこぺこと媚びへつらって生きてきたつもりはないが、本当に自分が何を望むのか分からなくなるぐらい YES と言っていたのはよく当てはまる。
膝を叩くと脚が上がるのと同じで、ほぼ反射に近い反応になっていると言ってもいい。その場で、断るための熟考ができない。

そして、生存本能ゆえに他者からの批判や拒絶、無視などに精神的な苦痛を感じる状態を拒絶過敏性(RDS)と呼ぶそうで、これがあるとマスキングやフォーニングといった振る舞いはより顕著になるらしい。
本当に、臨床医学分野ではどんなことにも名前がついている。いや、それだけ多くの人が苦しんでいるという事なんだろうか。

結局は後から自分が痛みを感じるのに、どうして嘘をついてしまうのか。この矛盾を人に理解してもらうのは本当に難しい(というか多分、不可能なのではないか)。
「評価されているのだからただ受け入れればいいんだよ」。自分が尊敬する人からのそのアドバイスを、結局一度も実行できなかった。

リモートは見えない

リモートでミーティングをすると、その後で心底へとへとになる。文字通り、へたり込む。動けなくなってベッドでしばらく寝そべる。一人でオフィスに出社している場合には、椅子に座っていられないのでオフィスの床に寝転がる。

実際に合って話すのはまだいい。細かなニュアンスが伝わってきて、相手が何を期待して、何について思案し、何に興味が無くて、何にいら立ちを覚えるのかがはっきりと分かるから。
だがリモートとなると、細かな表情はモザイクに覆い隠され、応答は常に0.5秒遅れ、自分が言ったことがどのぐらい伝わっているのか推し量れない。手も身体も映っておらず、言外に何を思っているのかについて考える材料がない。

このコミュニケーション様式(要は、言ったこと以外は言っていない)の方が業務上はむしろ健全だ、という人もいるかもしれない。が、自分にとっては苦痛でたまらない。
なんか変なことを言ってないかどうか、嫌われてないかどうか、相手が不機嫌かどうか、それが分からないので不安ばかりが募る。

思えば、自分の顔が常に画面に映り続けているのもしんどい。常にどうみられているかを客観視し続けている気がする。自己監視のコストが跳ね上がっているように感じる。
当然リモートミーティングであれば自分の顔を見せないと評価が下がることを気にして、カメラをオフにするという選択肢は無い。
こんな風なことを気にしながら毎日なんだかんだで3時間はリモートミーティングに時間を取られていたが、あれはほぼ自殺行為だったなと今なら言える。

普通の人から言わせると「相手がどう思うかなんて気にするな」ということらしいが、とにかく思考の癖が回路としてできあがってしまっているのである。
勇気を出して、 「非同期で思ってることを Google Doc に書き込むだけで、あとは責任者が決める。これだけでよくない?」と言ってみればよかったのかもしれない。だが言えなかった。
あるいは、「敢えて、発言しないミーティングはどう?同じ時間に同じトピックについてみんなが考えることに価値があるんであって、司会者以外はカメラもマイクも不要かもよ?」と提案してもよかった。これも言えなかった。
嫌われたくないので。

いちおうの病状

現状、メンタルクリニックに通って4か月になり、アトモキセチン(ADHDの抑制)とラツーダ(双極症の抑制)を処方してもらっている。
元気なときはゲームを作り、元気が無いときは寝ている。そうしながら、貯金と失業手当が尽きることに怯えている。
5000兆円あれば、これらの痛みはすべて消えるだろうに。500円ですら惜しいのだが、その金は苦痛を紛らわす酒代へと消えていくのであった。これは医師には指摘されていないが、おそらくアルコール依存もある。

以上。特にオチは無い。
こういう痛みを抱える人もいる、という話。