帰りの飛行機が機材繰りで75分遅延するという。キザイグリ。一生懸命グリグリしているみたいだ。
手持ち無沙汰すぎて本屋をぶらつくことにする。ふと陰謀論の書籍が目にとまる。タイトルは『世界を動かすユダヤの陰謀 人類をあやつる「闇の支配者」たち』。
表紙にはデカデカと六芒星が描かれているが、こんなにカジュアルに使っていいシンボルだったろうか。
結局は気まぐれで、この本を購入してしまった。
これによれば、世界は何から何までユダヤによって牛耳られているらしい。驚愕である。
筆者の主張の一例を下記にあげてみる。
- 世界三大財閥のひとつであるロックフェラー家はユダヤ系
- FRBもユダヤのコントロールを受けている
- 坂本龍馬や野口英世、鳩山由紀夫といった日本の著名人もユダヤの息がかかっている
- 日本の天皇家もユダヤにルーツがある
- ユダヤ人の究極の目的は、その他の民族の人口を抑制した上で奴隷化し、世界政府を樹立して神の国を創ることである
なお、出典は殆ど明示されていない。
この前読んだサンデル教授の『能力主義は正義か』では出典が50ページもの分量になっていた。本書では1ページだけ。
ひとつひとつの信憑性についてWebで調べるのも馬鹿らしい。GPT先生に信憑性の程をまとめて聞いてみるのはどうだろう。
そういえば、OpenAI の CEO であるサム・アルトマンもユダヤ系の出自だ。
彼の手がける仮想通貨 Worldcoin は Orb という生体認証装置を利用する人に配布される。最終的に、全世界の人々にベーシックインカムとして提供する構想があるとか。
……そういうことか!
通貨といえば、今朝はトランプが暗殺されかけたという。
トランプはFRBの独立性を弱める政策を進めると公言していた。そのFRBの設立当時、通過改革計画の草案をロスチャイルド代理人のポール・ウォーバーグがまとめあげたという。
そして本書では、リンカーン、ケネディなど過去の大統領達が、通貨発行権を政府側が独占する政策を推し進めようとしたことにより暗殺された説を強調している。
……そういうことか!!
冗談はさておき。
1章についてはユダヤ人が辿った苦難の歴史がよくまとまっており、Webの記事やYouTubeで見るよりは価値があったと言える。
しかし2章からは殆ど「きな臭いと思うのは筆者だけだろうか」だの「ただの陰謀論には思えない」だの「背後で怪しい影が蠢いているに違いない」だの。筆者の独自研究、あるいはただの推論の域を出ていない。
マナーとして、ここまでは事実、ここからは推論と線引きをはっきりして頂きたい。
陰謀論系の書籍からは触れたことのない成分を一気に摂取できる。そのためエンタメとして流し読みするには面白い。
が、5年に1冊でも買えば十分というところか。