目的
この記事は、いたずらにパニックを煽ることを目的としない。
そうではなく、日々変わる国際情勢やエネルギー事情について「どこかで誰かが発表しているデータ」の根拠を、一人一人が(AIの手を借りつつ)自分で考えられるようになることが目的だ。
もちろん、AIが言っていることが本当かどうか最後に自分で検証しに行く姿勢も重要であることは、言うまでもない。
これを踏まえたうえで、本記事では、どんな風に質問をすると原油備蓄に関するデータについてより深く確かめることができるのかについて、AI向けのプロンプトの例を紹介する。
「原油備蓄254日分」(4/2 時点だと 224日分の計算)を鵜呑みにしてしまわずに、一度しっかり考えてみるきっかけとなれば幸いだ。
前提
AIが自分でWebの情報を検索できる状態でないと、情報の精度は古いまま。
必ずWeb検索をONにして、FT(フィナンシャル・タイムズ、英国の経済紙)やEIA(米エネルギー情報局、世界のエネルギーデータを集計する米政府機関)等、最新の国際統計のデータを参照できるようにしよう。
1. 「備蓄254日分」の消費量って、何の消費量?
政府(経産省)が定義している消費量と、FT/EIA等の国際統計を比較させてみましょう。ナフサ(プラスチックや化学製品の原料となる石油製品)やバンカー燃料(船舶用の燃料)が含まれるかどうかも自分のAIに確認してみるのがよさそうだ。
プロンプト:
3月初旬時点で、日本の原油備蓄は「254日分」と報じられています。
この日数は、備蓄総量を「1日あたりの消費量」で割って算出されていますが、 ここで使われている「消費量」の定義は何でしょうか。
この定義に含まれるもの・含まれないものを具体的に挙げたうえで、EIA(米エネルギー情報局)やBP統計が示す日本の石油消費量と比較してください。
両者に差がある場合、その差は備蓄日数の計算にどう影響しますか。
2. 「民間備蓄」って、本当に備蓄?
例えば、水道管の中に詰まっている水のことを、ふつう我々は備蓄とは呼ばない。余剰分、あるいは蓄えとしての水量とは、ダムの貯水量などを指すという事は直感的に分かる。
政府発表の254日のうち、民間備蓄が101日分あるという内訳だ。ここで民間備蓄とは、製油所の運転在庫のことを指している。これを備蓄としてカウントできるのか、自分のAI に確認してみよう。
プロンプト:
日本の原油備蓄254日分のうち、「民間備蓄」は約100日分を占めています。
この民間備蓄の実態について教えてください。
具体的に:
- 民間備蓄は物理的にどこに、どのような形で保管されているのか
- 製油所の日常の精製活動との関係はどうなっているか
- 過去の危機(2011年東日本大震災など)で、義務日数の引き下げに対して実際に市場に放出された量はどの程度だったか
これらを踏まえて、民間備蓄の約100日分がそのまま 「使える備蓄」と考えてよいかどうか、評価してください。
3. ホルムズ海峡はいつ再開する?
本当に気になるのはここ。正確には、「日本国籍のタンカーがホルムズ海峡を通過できるようになるのはいつか」。これには複数の要因が絡むし、楽観的なシナリオも悲観的なシナリオもあり得る。
AIに複数のケースを検討させてみよう。
ここでは、機雷掃海、つまり海峡に撒かれた機雷(海に沈められた爆弾のようなもの)を除去する作業にかかる時間も無視できない。
- 機雷掃海の歴史的タイムライン
- 保険市場の正常化条件
- 日本の法的制約(護衛艦派遣の法的根拠)
これらを踏まえて AI に考えさせる必要がある。
プロンプト:
ホルムズ海峡が正常化し、日本のタンカーが再び安全に通過できるようになるまでのシナリオを複数提示してください。たとえば以下のようなケースが考えられます:
- 早期の外交的解決(停戦合意)が成立した場合
- 軍事的な制圧の後、掃海作業を経て再開する場合
- 部分的な通航再開(護衛付き等)が先行する場合
それぞれについて、過去の類似事例(湾岸戦争、タンカー戦争等)を参照しつつ、正常化までに必要な期間を見積もってください。
また、保険市場の正常化条件や、日本が護衛艦を派遣する場合の法的手続きにかかる時間も考慮に含めてください。
最後のアクション
ここまでのプロンプトを自分のAIに投げてみた人は、どんな反応がAIから返ってきただろう。思ったより楽観的だったか、想像通りだったか、それとも悲観的か。
興味のある人は最後に、ここまで出てきた回答を踏まえて、原油備蓄量の月ごとのシミュレーションをしよう。もちろん、自分で手計算することも可能だし、AIにやってもらうことも可能だ。
政府発表の数字とどのぐらい乖離があるかについては、ぜひご自身の目で確かめられたい。