yoshiakist

セドリック

セドリックが日本に来ているらしい。
なんでも会社を辞めることになり、お別れ会も兼ねて日本に来ているとのことだ。
仕事という直接が関わりが無くなっても極東の島国に来てくれるなんて、彼は本当に日本で過ごした仲間のことが好きなようだ。

私が前に勤めていた会社で、彼はフランスの支社員として働いてた。
極めて生真面目な性格で、フランス人と仕事をするよりも日本人との方が馬が合うのだそうだ。

私がその会社に在籍していたのは2年に満たなかったが、彼がプロジェクトの関係で日本に来る度になんだかんだでよく会っていた。
特に接点があったのは水泳だ。よく市営プールで彼から水泳を教わっていた。
なんでも、旅に行くときは必ず競泳用水着を携行しており、旅先で泳ぐのが楽しみなんだとか。
また、かつてトライアスロンが趣味だったという彼の身体は鍛え上げられており、50mプールで延々と往復している姿はよく目立っていた。

沖縄に私がいることをかつての同僚から聞き、連絡をくれたのだそうだ。
3週間の旅行のうち1週間を東北で過ごし、そこからノープランでとりあえず沖縄に来てみるらしい。なんともフットワークが軽いことである。

話を聞くと、どうも彼は美ら海水族館や首里城といった主要な観光地には興味が無いらしく、<ruby><rb>本部</rb><rt>もとぶ</rt></ruby>でトレッキングをしたり、石垣島に行くことを考えているらしい。
今はインバウンド需要が完全に復活しており、中国やタイからの旅行客で主要な観光施設は大変な混雑ぶりだ。なので、自然を楽しみたいという彼の方針は Good に思える。

ただ、日本で有効な免許証が無く、レンタカーを借りないという。
それなら本島の北部まで足を伸ばすのではなく、さっさと石垣なり慶良間諸島なりに行ってしまうのがよい。理由は下記の3つだ。

- バス停から長く歩かないと登山口まで着かないところが多く、移動時間に比してただつまらない道路を歩く時間が長過ぎるだろうということ
- 沖縄の山はどこも標高が低く、トレッキングはあっという間に終わってしまうかもしれない。そして旅慣れた彼にとって、そこまで満足な眺めにならないかもしれないということ
- 石垣でもトレッキングのコースやツアーは数多くあり、海も山も楽しめて美味しいこと

…というような英文を LINE で丁寧に説明して送ってあげた私も大概、生真面目な奴である。
彼からの返答には、「どうもありがとう。本部に行ってみるよ!」とあった。何がそこまでセドリックを惹きつけるのであろうか。

ちなみにかくいう私は、実は石垣にも本部にも行ったことがない。
住んで1年になるが、さっと2週間だけやってくるフランス人のほうが私よりも沖縄を満喫していく(ように見える)のだから、不思議なものである。
近所のカフェにいって、気の良い夫婦に本部の良いスポットを教えてもらうことにする。